4.用語
この一般要求事項では、関係法令、ISO/IEC 17000及びVIM3で定義された用語を用いる他、次の用語を定義する。
(1) 特定二次標準器
特定標準器による校正等*備考1)を受けた計量器*備考2)
をいう。
この用語に標準物質を含める場合には、「特定二次標準器等」という用語を使用する。
備考1: 「特定標準器による校正等」とは、特定標準器又は特定副標準器を用いて行う計量器の校正又は特定標準物質(計量法第134条に規定する特定の物象の状態の量を現示する標準物質を製造するための器具、機械又は装置を用いて製造された標準物質)を用いて行う標準物質の値付けを意味する。
備考2: 「計量器」とは、物象の状態の量を計るための器具、機械又は装置のことをいい、一般に「測定器」と呼ばれるものの他に、分銅やブロックゲージなどの実量器なども含まれる。JIS Z 8103(計測用語)では、「計測器」という用語がこれに当たるが、この一般要求事項では関係法令で使用する「計量器」という用語に統一している。
(2) 常用参照標準
計量法第143条第2項第1号に規定される「特定標準器による校正等をされた計量器若しくは標準物質又はこれらの計量器若しくは標準物質に連鎖して段階的に計量器の校正等をされた計量器若しくは標準物質」のうち特定二次標準器以外であって、該当する測定量において申請事業者及び登録事業者が保有する最上位の計量器又は標準物質をいう。
備考: VIM3 5.6では、「reference measurement standard(常用参照測定標準)、reference standard(常用参照標準):ある組織又はある場所で、ある種類の量の他の測定標準を校正するために指定される測定標準」が定義されている。
(3) トランスファスタンダード
特定標準器又は特定副標準器にトレーサブルな計量器(測定標準を含む)であって、現地校正に携行するもの。
(4) 最高測定能力
JCSSの登録においては、申請事業者及び登録事業者が登録された事業の範囲で実施する測定の最小不確かさとして最高測定能力を定義し、その定義に基づいて審査を行い、登録する。この最高測定能力は、計量法施行規則で以下のように規定されている。
最高測定能力 : 国際度量衡委員会が定めたものであって、ある測定量(measurand)の一つの単位又は一つ以上の値を実現する計量器の校正等を実施する場合、又は該当する量の測定のために使用される計量器の校正等を実施する場合において登録等の範囲の内で達成できる測定の最小不確かさ
備考1: 最高測定能力は、登録事業者の登録の範囲を定義するのに用いられるパラメータの一つであり、その他のパラメータには物理量の種類、校正方法、校正対象物の種類、測定範囲などがある。
備考2: 最高測定能力は、登録証にその他のパラメータとともに明記される。また、認定センターがウェブサイト上のホームページ等により公表する登録事業者のダイレクトリにも記載され、登録事業者の潜在的顧客に対し必要な情報を提供するために用いられる。
備考3: 最高測定能力の定義の中で「登録等の範囲の内で」という用語を使用しているが、これはJCSSとして「最高測定能力」という用語を使用する場合に申請事業者及び登録事業者が登録を受ける/受けた事業の登録の範囲の内で達成できる最も小さい測定の不確かさを意味し、必ずしもその事業者が持つ最高水準の能力(最小不確かさ)を意味するものではない。また、校正証明書に記載する不確かさに、最高測定能力を濫用してはならない。
同時に、最高測定能力の定義は、登録事業者がその登録において最高測定能
力より小さい測定の不確かさを主張する権利が与えられていないことを示している。実際の校正プロセスが測定の不確かさを大きくすることが実証されるときは、最高測定能力を示す不確かさよりも大きな不確かさを記述するよう求められているということである。概して、校正対象機器はその仕様に応じて、不確かさにある程度の寄与を与える。したがって、実際の測定の不確かさは決して最高測定能力より小さくならない。実際の不確かさを記述する際には、登録事業者はGUMの原則を適用するよう求められる。
備考4: 最高測定能力は、その測定範囲を示すパラメータによる数式で記述されることが望ましい。それが困難な場合は、校正の範囲を細分してその測定範囲ごとの不確かさを示すものとする。
(5) 認定国際基準
JCRP21 JCSS 登録の一般要求事項 6/37認定センターが、APLAC、ILAC等の地域又は国際試験所認定機関協力機構の国際相互承認(MRA)に署名することにより生じる、試験所・校正機関認定制度の国際的な要求事項のこと。
(6) 国際MRA対応認定事業者
登録事業者のうち認定国際基準を満たす事業者
(7) 立入検査
計量法に基づき、認定センターが必要と認めて実施する不定期の検査
(8) 定期検査
認定国際基準への継続的な適合及び技術能力の維持を確認するため、認定センターが定期的に行う、現地検査。部分検査及び全項目検査がある。
(9) 校正ラベル
登録事業者がJCSS校正等を行った計量器等に貼付できるラベルのこと。このラベルは校正
の状況を示すものであって、計量器等の製品としての品質や仕様への適合が認証されたことを示すものではない。